
「生活保護を受けている方が部屋を退去するとき、クリーニング代や原状回復費用は出るのか」
結論からお伝えすると、退去時のクリーニング代・原状回復費用は、原則として生活保護費からは支給されません。
ただし「敷金なし契約」「経年劣化と借主負担の線引き」「社会福祉協議会の貸付制度」など、知っておくと負担を抑えられる例外と対処法があります。
この記事では、福祉担当者・受給者本人の双方が実務で迷わないように、生活保護と退去費用・クリーニング代の正しい考え方と、払えないときの相談ルートを整理して解説します。
生活保護受給者の退去費用・クリーニング代は「原則自己負担」

「住宅扶助があるのだから退去費用も出るはず」と誤解されがちですが、生活保護制度の建付けでは退去時のクリーニング代や原状回復費用は対象外とされています。
- 退去費用・クリーニング代が支給されない理由
- 住宅扶助で支給される費用と支給されない費用の違い
- 敷金なし物件で退去した場合のクリーニング代の扱い
退去費用・クリーニング代が支給されない理由
退去時のクリーニング代や原状回復費用は、本来「借主が部屋を使ったことで生じた損耗」を清算するためのものです。生活保護法に基づく扶助は生活を維持するために必要な最低限度の費用を保障する制度であり、退去時の清算金まではカバーされない設計になっています。
住宅扶助で支給される費用と支給されない費用の違い
| 支給される費用(住宅扶助の対象) | 支給されない費用(対象外) |
|---|---|
| 家賃・間代(地域ごとの上限の範囲内) | 退去時のクリーニング代・ハウスクリーニング |
| 転居時の敷金・礼金・仲介手数料(上限あり) | 原状回復費用・壁紙張替えなど |
| 引越し業者への運搬費用(相見積もりが原則) | 更新料の一部・退去後の残置物撤去費用 |
「入居時の初期費用」と「退去時の精算費用」では、生活保護の扱いが大きく異なります。判断に迷うケースは自治体ごとに運用が違うため、必ず担当ケースワーカーへ事前確認したうえで進めるのが安全です。
敷金なし物件で退去した場合のクリーニング代の扱い
近年は「敷金ゼロ・礼金ゼロ」を売りにした物件が増えており、生活保護受給者が敷金なしの部屋に入居しているケースも珍しくありません。敷金なしの場合、貸主は退去時に直接借主へ原状回復費用やクリーニング代を請求します。
厚生労働省の事務連絡では、敷金なしで入居し退去時に原状回復費を請求された場合、①契約書に特約があること、②真にやむを得ないと認められること、③故意・重過失でないこと。この3要件をすべて満たす場合に限り、必要最小限度の額を住宅維持費として認定できると整理されています。
原状回復費用の「適正な負担範囲」を正しく理解する

退去費用が高額になる背景には、「本来は貸主が負担すべき費用」まで借主に請求されているケースが少なくありません。
国土交通省ガイドラインで定める「貸主負担」と「借主負担」の線引き
- 建物・設備の自然な劣化(経年変化)→ 貸主負担
- 普通に住んで生じる損耗(通常損耗)→ 貸主負担(家賃に含まれる)
- 借主の故意・過失・善管注意義務違反による損耗 → 借主負担
たとえば、家具を置いていたことでフローリングに付いたへこみや日焼けによる壁紙の変色は経年変化に近く原則として貸主負担です。一方で、タバコのヤニ汚れによる壁紙全面張替え、ペットによる床の損傷、結露を放置して発生した広範囲のカビなどは借主負担になりやすい項目です。
改正民法(令和2年4月1日施行)でも、通常損耗・経年変化について借主は原状回復義務を負わないことが明文化されています。「ハウスクリーニング代一式」「壁紙全面張替え」のように一括で借主負担とする請求は、ガイドライン上は適正と言えないケースも多くあります。
生活保護受給中に発生した経年劣化・故意過失の判断基準
長く同じ部屋に住んでいるほど、経年劣化の比率が大きくなり借主負担分は本来小さくなります。判断のポイントは3つです。
- 入居期間:何年住んだか(長いほど経年劣化分が大きい)
- 損耗の原因:通常使用か、特別な使い方によるものか
- 修繕範囲:本当にその範囲全体の張替え・交換が必要か
敷金返還が発生した場合は収入認定されるケースがある
退去時に敷金が返還されるケースでは、その金額が生活保護の「収入」として扱われ、保護費が一時的に減額される可能性があります。特に、住宅扶助で支給された敷金が返還される場合は、自治体の判断によって返納義務が生じることもあります。退去前に返還見込み額がわかった時点で、必ずケースワーカーへ報告してください。
退去費用が払えないときにケースワーカーに相談できること

退去費用の請求書を見て「とても払えない」と感じたとき、まず動くべき相手はケースワーカーです。
転居指導や施設入所の場合は支援を受けられる可能性がある
次のようなケースでは、退去費用の一部について支援が検討されることがあります。
- 家賃が住宅扶助上限を超えており、福祉事務所の指導で安い物件へ転居する場合
- 身体・精神状況により単身生活が困難となり、グループホームや特別養護老人ホームへ入所する場合
- 立ち退きやDV・虐待など、本人の責に帰さない理由で転居を余儀なくされる場合
退去期限が迫っている場合の対応は 生活保護の引っ越し費用は出る?支給条件・金額・手続きの流れを福祉担当者向けに解説 も合わせてご確認ください。
社会福祉協議会の生活福祉資金貸付制度を活用する
生活保護受給中でも、世帯の状況によっては社会福祉協議会の「生活福祉資金貸付制度」を利用できる場合があります。
- 連帯保証人ありの場合は無利子、保証人なしの場合は年1.5%
- 据置期間は最終貸付日から6か月以内
- 償還期限は据置期間経過後20年以内
大家・管理会社への分割払い交渉のポイント
- 支払う意思があることを明確に伝える(連絡を絶たないことが最重要)
- 毎月いくらまでなら無理なく払えるか、生活費を踏まえて具体的な金額を提示する
- 請求の内訳を確認し、ガイドライン上疑問のある項目は理由を添えて相談する
- 合意した内容は必ず書面(覚書・分割誓約書など)で残す
クリーニング代が高額すぎる場合の対処法

請求内容が適正かどうか確認する手順
- 請求書の項目ごとに「金額」「単価」「数量」「面積」が明記されているか確認する
- 賃貸借契約書の特約条項と請求項目を照合する
- 国土交通省ガイドラインに照らし、貸主負担分と借主負担分を仕分ける
- 入居期間・耐用年数を踏まえ、経年劣化分を差し引いた金額を計算する
「壁紙全面張替え」「フローリング全面張替え」のような大雑把な請求は、本来の負担割合より高くなっている可能性があります。入居前の状態がわかる写真や入居時のチェックシートが手元にあれば、証拠として活用できます。
消費者センター・法テラスへの相談窓口と活用方法
- 消費生活センター(消費者ホットライン「188(いやや)」):契約・請求トラブル全般
- 法テラス(日本司法支援センター):弁護士費用の立替制度を利用した法律相談
- 都道府県の宅地建物取引業協会・全日本不動産協会:宅建業者を介した相談窓口
法テラスは収入要件を満たせば無料で法律相談を受けられ、生活保護受給者は弁護士費用の立替制度の利用条件を満たしやすい立場です。
家財整理・残置物撤去を専門業者に依頼する選択肢
退去費用が膨らむ大きな要因のひとつが、室内に残された家財・粗大ゴミの処分費用です。不用品回収・残置物撤去の専門業者へ依頼することで退去費用全体を抑えられる場合があります。
- 分別・搬出・処分を一括で任せられるため、管理会社が業者手配する場合より相場が安くなることが多い
- 写真ベースで概算見積もりを取れる業者なら、現地立会いの負担を減らせる
- 福祉案件・生活保護案件の対応経験がある業者であれば、ケースワーカーとの連携もスムーズになる
中村トランスポート(中村引越しセンター)では、長崎県内(大村市・諫早市・長崎市・佐世保市・離島など)の生活保護転居・施設入退所時の家財整理に対応しており、写真共有による1時間以内の可否判断と、見積相談無料・追加料金なしで動いています。
生活保護と退去費用・クリーニング代でよくある質問

Q. 市営住宅・公営住宅の退去費用はどうなりますか?
市営住宅・県営住宅などの公営住宅も、退去時のクリーニング代・原状回復費は基本的に借主(入居者)負担です。退去通知が届いたら担当部署で項目と金額を確認するようにしましょう。公営住宅の場合も、退去費用そのものは生活保護費からは支給されません。
Q. 施設入所時に退去した場合の費用負担は誰になりますか?
特別養護老人ホームやグループホームなどへ入所するために退去するケースでは、原則としてそれまで住んでいた部屋の退去費用は受給者本人の負担です。本人の判断能力が低下している、身体状況が悪化して片付けに対応できない、家族による支援が見込めない、といった事情があるときは、ケースワーカー・地域包括支援センター・成年後見制度などを組み合わせて対応を協議することになります。
Q. 受給者が亡くなった場合の退去費用は誰が払いますか?
受給者がお亡くなりになった場合、退去費用や残置物処分費は基本的に「相続人」へ請求されます。相続人が誰もいない、または全員が相続放棄をした場合は、最終的に大家・管理会社が損失を負うか、家庭裁判所への相続財産清算人選任申立てなどの手続きを経て処理される流れになります。
Q. 引越し費用支給の条件も確認したいときは?
生活保護の転居費用が支給される18の条件については、生活保護で引っ越しが認められる条件とは?ケースワーカーが押さえるべき18の要件と手続きの流れ で詳しく解説しています。
生活保護受給者の退去費用・クリーニング代についてまとめ
- 生活保護受給者の退去費用・クリーニング代は、原則として自己負担
- 住宅扶助は「家賃」や「転居時の初期費用」が中心で、退去時の精算金はほぼ対象外
- 敷金なし契約で退去時に原状回復費を請求された場合は、特約・損耗状況によって例外的に住宅維持費として認定される余地がある
- 国土交通省ガイドラインの「経年劣化は貸主負担・故意過失は借主負担」のルールを押さえておく
- 払えないときはケースワーカー・社会福祉協議会・大家との分割交渉・消費者センター・法テラスを段階的に活用する
長崎県内(大村市・諫早市・長崎市・佐世保市・東彼杵・川棚・離島など)で生活保護転居・施設入退所・残置物撤去・滞納退去などに伴う家財整理が必要な場合は、中村トランスポート(中村引越しセンター)の 福祉・生活保護担当者様向けお問い合わせページ よりお気軽にご相談ください。写真共有による1時間以内の可否判断、立会い不要・鍵預かり対応、見積相談無料・追加料金なしの体制で対応しています。
※本記事は2026年4月時点の情報をもとに作成しています。制度・運用の詳細は自治体ごとに異なる場合があるため、実際の手続きは管轄の福祉事務所にてご確認ください。

